音もなくそれは舞い落ちた

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 司祭は気の毒そうな顔をして私に言った。 「典型的なビエールィ魔法原虫性の胃腸炎ですな、リディア・ウロジーミロヴナ。ここの風土病です。いえ、心配は要りません。毎日薄い粥だけを食べて、神様にお祈りをすれば、一ヶ月で回復します。ただし、絶対安静ですよ」  十字の傷跡のあるやや禿げ上がった額を撫でながら、司祭は私に療養生活中の注意点をこまごまと説明した。決して粥以外は口にしないこと、飲酒は控えること、外出も控えること、等々……  話が終わると司祭は椅子から立った。 「あとでアンナを寄越します。貴女に神様のお恵みがありますように」  寝台に横になったまま型通りに礼を言って、彼が部屋から出て行ったのを見送ると、私は大きく溜息をついた。
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