アタック

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「あぁ。それなら良かったです」  固く閉じた蕾が花開くように、小野原はふわりと笑った。なんだ?なんだ?なんなんだ?奇妙という言葉に尽きる。 「あ、どうぞ!続けてください」  小野原に促されたので先を進めることにする。  踏み込んじゃいけないことは、ある。趣味とか性癖とか、そういうのとは別の禁忌(タブー)のような。小野原は得体のしれない人だ。ホントにヤバイやつだったら困る。今日はもう深く掘るのはよそう。 「今、伺っているご連絡先は携帯番号だけなので、ご迷惑でなければご勤務先のお電話番号もお教え願えませんか?」  私の丁重なお願い。だが、 「あぁ!それなら大丈夫です」  毎度のことながら期待する答えとは違う答えが返される。 「大丈夫、といいますと?」 「あと6日ほどはいつでも携帯は繋がりますからご心配に及びません」 「いえ、その後もですね――」  どこまでも食い下がる私に小野原は、 「この話はそんなに長引く話ですか?」  ピシャリとシャットアウト。これはもう絶対無理なやつ。私は回れ右で元の位置に戻る。無理強いはしない。 「森野さん、今日明日にでも終わらせましょう。長引かせたくない」  小野原はいいことを言う。同感だ。早く終わらよう。  言葉を交わしている間にいつのまにか震えは止まっていた。よし!今なら大丈夫。さあ、はじめよう。 「では、お車の所有者の滝川はなさんとはどういったご関係なんですか?」 「滝川さんですか?友人ですよ」  なんでそこだけそんなに自信満々なんだ!ってぐらい、事もなげに答える小野原。だが、設定お忘れじゃありませんか?事故当初は親戚の方。それじゃあスタートよりも随分と遠い関係になりましたよ? 「どういった?」 「気になりますか?」 「そうですね。示談も賠償金のお支払いも滝川さんとさせて頂きますから」  揺さぶるように小野原をはじき出した嫌みを投げる。
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