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「そこの酔っ払いさんはレッドブック整理してね」
目敏い結城は酔っ払いにすぐに気づいた。
「そんな酔ってませんよ!」
成分表を目にした瞬間から急に月島の耳が赤くなった。酔いが補完され、今は完璧な酔っ払い。
「そんな真っ昼間から語っちゃうほどすっとこどっこいの酩酊状態で?」
うっと、月島は文字通り言葉に詰まる。お世話になりっぱなしの先輩 結城の言葉は絶対。結城が白を黒と言うなら、喜んで黒も白と言う。このビルからバンジーを命じられたら喜んで飛び降りるだろう。
「おまえさ、今年最後のCOLどうすんの?そんなで大丈夫か?」
結城が月島に歩み寄ってきた。背の高い男二人して身を縮めてコソコソと雑談が始まる。
「大丈夫、というと?」
訝しげに眉をひそめる月島。
「酒飲みながらするらしい」
結城が月島に耳打ちする。
「は?その心は?」
「いかなる場面も毅然とした対応を。で、優勝したセンター、ビールかけするんだってさ」
「二重に意味がわかりません」
月島はオーノー!と悲しい表情で首を横に振る。この瞬間、月島の一回戦敗退は確定。
「男のロマンでしょ?とか、うちの美人すぎる上司が言ってた。そうそう、そういやさ、この間――」
さらに脱線してる。
自称 示談交渉人一名脱落。その分のフォロー業務増。そして本日も残業確定。
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