ミスリード

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 しかしだ。それ以前に小野原は所有者ではない。そんな人ならどっちも生まれない気がする。じゃあ借り物だから?それならそれでこんなに淡々としてられるもの?それこそ焦って、怒鳴って、罵倒されそうな…  色々な角度から疑うと余計に分からなくなる。糸が絡み合ってもう端もわからない。  相手が纏う空気に直に触れれば、積み上げた疑問ぐらいは整理できるだろうか?  100:0で面談なんてありえないが、仕方がない、会う方向で話を詰めよう。とにかくこの電話を終えたい。  卓上カレンダーに手を伸ばすと、目の前に座る田神が机を囲うデスクパネルからピョンと顔を出した。ワニワニパニックのハンマー持ってたら思わず叩いてしまうところだ。  渋谷を歩けば10代と間違えられ、「アイドルになりませんか」とスカウトされる田神。本人は童顔が悩みのようだが、一般的には中性的な顔立ちの美少年だ。田神は人事部の人員配置ミスにより、この最果ての地に送り込まれた。それでもめげずに仕事をこなす姿は可愛い。その田神の表情が暗い。というより、青い?
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