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「変わらず燃費悪いじゃん。ねぇ、保険はどうしようか?あれってさ、150キロ近くスピード出さなきゃワープできないでしょ?あんなにスピード出して失敗したら壁に激突して大事故だよね。やっぱり対物は無制限よねー。あ、過去に戻った時は担保されるのかな?保険期間から外れるからダメ?ん?過去で事故したときは事故現場急行サービス使えないよね?困るね」
「………」
私の質問には答えず、背中にあるプリンターから吐き出された紙を一通り配り歩いた月島が戻ってきた。
「試さなくても酔いはさめてるから。ちゃんと仕事します。大丈夫です。ゴメンナサイ」
最後にプリントアウトしたまま置き去りだった私の書類も事案別に仕分けして手渡してくれる。マメだ。
「そう?」
「水をがぶ飲みして希釈したし」
確かに机の上の2リットルのペットボトルの水が底だ。
「ねぇ、甘酒も酔うの?」
うーんと少し考えてから、
「体調次第でかす汁も」
頷きながらそう答える月島。
「新鮮なしじみを樽買いしてプレゼントするね」
精一杯の思いやりだ。
「悪いね。でさ、」
「うん?」
「なにやった?」
月島が真顔でそう尋ねる。しまった。話をそらすつもりが追い詰めた?
「全ては予定通り。もう想定内よ。むしろ狙い通りで困っちゃうぐらい」
1時間以上同じ姿勢でいた。私は凝り固まった筋肉をほぐすように、肩を揉み、腰をねじる。身体の奥でグニグニと筋肉が苦しそうな音を立てている。
「話、聞いてやろうか?」
酒を飲むジェスチャーをする月島。
「聞かせてほしいんでしょ?大丈夫なの?肝臓。そんな泥酔で」
私もフフッと不敵な笑みで応戦する。
「泥酔じゃない。ほろ酔い。あれこそCOLの練習してただけ」
そう強がる月島だけど、全く強さは感じない。
「へー、チョコ一粒でほろ酔えるのね」
「安上がりだって?」
「いえいえ。で、一昨年は暗闇。今年はお酒なのね」
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