ミスリード

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「本部長の直電にちょくちょく連絡来てるみたいだし?」  月島が周りを気にして小声で晴にそう教える。 「椿さんから?」 「うん。悪くはないけど良くもない話らしい。どうなるんだろな?」 「ふーん。まぁ私たち下っ端がどーこーできる話じゃないしね?」  会社の名前が変わってもすることは同じだし。さぁ、休憩終了。お仕事再開!と思ったら、 「あそこ、制服だっけ?」  月島の目尻が下がる。じーっと無言で見つめると慌てて口元を隠した。 「もしもし?一瞬で傾いてません?」 「いや、だってさ!晴も制服で脚立持って歩けるじゃん!」  そんな夢、ない。 「とりあえず、さっさと仕事片付けなよ。また練習するんでしょ?」  月島を無視して机に向かう。が、月島の話は終わらない。   「あれ?そういやさ、晴はCOLエントリーしてないよな?ギリU-30だろ?なんで?」 「ギリが余計。残念ながらね、ドクターストップ」 「は?」 「酔える量がわからないのよ」  “酔って”が大前提なのに、酔えないのだから話にならない。 「あ、なんかごめん」  月島がすぐに謝る。 「ホント、ごめんね」  月島は胸の前で両手を擦り合わせる。女子のぶりっ子みたいに。  わざとらしく申し訳なさそうにされると余計に腹が立つ。私の一瞥に月島はヘヘッと笑った。 こっちこそごめんね。鋼の肝臓で。
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