セッション

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 大量の伝言メモを前にやる気スイッチが入った私の怒涛の追い上げは凄まじかった。それでも到底定時には間に合わず、月島と田神が先に退社。  30分後、折電を全て終わらせ、その他は潔く諦めた。書類と郵便物の束を机の引き出しに押し込み、「明日、ファイルしますから」と誰へとはなしに断りを入れ、申し訳ない気持ちと共にしっかり施錠。確認。個人情報を置き去りにしたまま帰ることは厳禁だ。  呼び止められないように、「お先です」も最後まで言い終わらぬうちに一目散にセンターから逃げ出した。  会社近くの居酒屋に駆けつけた時には飲み会的なものは始まっていて、そこにはいつも通り静かに酔う二人がいた。  仲が悪いわけではないが、酒に酔うと極端に口数が減る。仲良く横並びに座り、各々睡魔と闘いながら私の到着を待ってくれていたようだ。 「始めてる」 「だね」  上座に通され、月島に「遅れてきた罰として本日の失敗をお聞かせください」とエアマイクを向けられる。   駆け付け一杯も、それ以前にオーダーも許されないまま、とりあえず小野原との経過を話して聞かせた。 「試し堀りの落とし穴に落ちる芸までできるんだな、晴」  目の下をほんのり赤らめた月島が心底感心したように言う。褒められてないことだけはよーくわかる。 「マネできないでしょ?」  身体を机の上に乗り出し、私は自慢気に言って返す。 「落ちるぞ、落ちるぞって言ってる本人が目の前の仕掛けに落ちるぐらい難易度高い芸だよ」 「照れる~!!そんなに褒められたら」  おどける私に、   「にしてもさ、それ、ヤバいな。なぁ、ヤバイ奴って気づいてる?」  月島の顔から笑みが消える。急に真顔になる。下からライトを当てたら『やだなー、こわいなー』が出てきそう。
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