セッション

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「あれだよな?あの、不動産関係の仕事しててさ、土日仕事で、イケメンで、俳優のほら、あの人に似てて、車が趣味の人だろ?あれ?車なんだっけ?」 「RX-7」  月島の質問が面倒で、私は一言で終わらせる。あれ、あの、多いけど、まだこの話続ける? 「車って共通の話題もあるのに勿体ない」  と、月島。男女交際って、そういうもの!? 「話題にしたことなんてないけど?」 「なんで?それ以外で忙しいの?」  月島がイヤらしくニヤリと笑う。 「月島、顔面ヤバイよ」 「ヤバイぐらいカッコいい?」  どんどん面倒くさい酔っ払いになっている。 「そうじゃなく、こっちには一応、守秘義務があるでしょ?車を話題にすると言っちゃいけないことをポロッと漏らしそうで怖くてあえて話題にしなかったの」 「ふーん。晴って意外と常識人だったんだな」 「は?」 「『逃げよう』と言われて『ごめんなさい』って言うし」  と、妙に感心する月島。 「そりゃ、ね」  いや、だから普通言うでしょ?世間の9割そうするでしょ? 「良識はないけど踏みとどまれるだけの常識がどうにかあって良かったな。晴って、たまにお花畑でスキップしてるよね?」  真面目な顔でディスる月島に殺意がわく。 「そんなファンタジーな世界で生きておりません。(わたくし)」  力がこもりすぎて丁寧になる。 「いやいや、気づいてないなら教えてあげる。存在自体がファンタジーなんだよ、晴は」  そこが素晴らしいだよと、無駄に高糖質な低音ボイスで囁かれる。もう意味を成していない。 「しかし『逃げて』って、何したんだろうな?」  天井の一点を見つめて腕組みする月島。 「さぁね…」  もう取り合うのも面倒。おしぼりを何度も折り返し、小さく折りたたんでいく。 「さぁって、冷たいね」 「だって、どうするの?それ知ってもどうすることもできないし」
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