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考えたって何かできることはたぶん、ない。やりつくした上で「逃げよう」と言ってるのだ。冷たいと言われたらそうだけど、でも、手も貸せない人間がアレコレ考えることこそ偽善?それよりもっと。ただの冷やかし、高みの見物じゃないだろうか。
「恋の供養と思って考えてやれよ!」
と、月島。
「面白がってるだけでしょ?」
「うーん。かな」
あっさり肯定する月島。そこは嘘でも否定しようよ。
なんだろなーと月島が枝豆を一つ手に取る。なんだろねーと、軽く受け合う。
「でも…でもさ、」
私の言葉に月島が顔を上げる。
「うん?」
月島はティッシュを一枚引いた空の皿に食べた枝豆を積む。最後はまとめて終わりという手筈。酔っぱらっても店の片付けまで気にしてる月島らしい食べ方だ。
「先のことは分かんないよね」
「ん?なんだよ、突然」
月島が小さく笑う。
「“存在し続けるのは変化のみである”って言葉がある。積み上げた先でしか見えない変化って、きっとあるよね」
「まぁな…」
「もしかしたら私も結婚するミラクルあるかもよ?なんせお年頃だもん。今月だけでお祝い3件」
3の指を付きだすと、ねぇよ!と一蹴された。
「何の真面目な話しかと思ったら!仕事に結婚は必要ないって言うほど仕事バカな晴が?あぁ!もしかして“結婚しない”って言ったこと根に持ってる?“できない”って言ったのは俺じゃないからな」
「わかってるよ」
汗をかいたコップの中でカタンと氷が音を立てた。月島が下に溜まる冷水ごと氷を一つ口に含み、ゴリゴリと奥歯で噛み砕く。
「ま、でもその時は――」
「うん?」
ゴクンと全部を飲み干した月島はまた笑う。
「結婚式に呼んでな。そんで卒業ごっこしていい?」
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