186人が本棚に入れています
本棚に追加
「それウケ狙いでしょ?」
年齢が上がるごとに洗練され、出会った頃よりも骨格はシャープになった。同じだけ内面も無駄な部分が削ぎ落とされ、男らしい顔つきになった月島。なのに、勿体ない。ここまでされると笑いを誘っているようにしか見えない。
「は?まさか!」
そんなわけねぇだろ、そんなバカどこにいる?と逆に鼻で笑われる。「目薬は?」と、聞くと「忘れた」と言う。バカはあなた。
「100年の恋も冷めるよ、それ」
呆れた私から自然とため息が溢れる。
「別にいいし」
「そうね。月島はアバンチュール属ワンナイトラブ派ね」
100年も必要ない。
「違うわ!なんだそれ?どんな生態だよ!」
心外だ!と拳を握り、訴える月島。
「違うの?」
「ひっどいな!!俺、どんだけチャラい設定?」
「私から見たほぼ実寸大の月島です」
私が前を向いたまま答えると、横で月島は椅子に深く座り直した。
「違うよ。そうじゃなくてさ」
「ん?」
「冷められても別に問題ないってこと。俺が好きなことには関係ない」
「なに真面目に――」
思わず月島を見てしまう。至近距離で目が合う。どこか寂しそうに微笑む月島には、なんとも言えないやるせなさがみえた。疲れをより濃く見せる。
「ねぇ。なにか、あった?」
声が掠れる。もう笑いにも冗談にもできない。その答えを知りたい。
最初のコメントを投稿しよう!