インジャード

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「アホだろ?」  味だけは間違いないと評判の会社近くの定食屋。本日の500円ランチ“白身魚のフリッター”を口に運びかけたところで、月島がパチンと音を立てて箸を置く。  珍しく朝から不機嫌だった。今はそれに輪を掛けて眉間のシワが深くなっている。楽しいランチタイムとは程遠い息が詰まる空気に、これはちゃんと話をしなくちゃいけないと魚を元いた場所に戻す。 「どこがアホなの?ドッキリかと思って顔作ったこと?もしかして芸能人とご近所さんかも!!とか淡い期待抱いたとこ?それとも実は妖精だったんじゃないかと疑ってること?」  あれからこんなことがありました、と昨晩の一件を面白おかしく田神に話して聞かせた。田神は「へぇ~!!」「はあ…」「スゴッ」とお手本のようなリアクションで盛り上げてくれた。月島はその間、硬く口を閉ざしたまま。唇を引き結び、目も合わせない。話し終わって、さぁ食べようとなった時に、さっきの一言。 「全部だよ、全部」 「なんで?」  不用意な私の「なんで?」に、溜まりにたまったマグマみたいに月島の怒りが一気に噴出する。でもこっちに否はないので斜に構えていると、   「なんで、じゃねぇし。危機管理能力は幼稚園児以下か!!」  そんな態度も気に入らないようで、月島の語気がどんどん強くなる。しかしそこで怯む私じゃない。むしろ日々の鍛錬でそこに食いついてしまう。だから余計にこじれていくんだろうけど。 「幼稚園児は『スマホ持ってて』なんて気の利いたこと言えませんけど?」    と、喧嘩を買う。   「あのさ、それで危機管理してるつもりなのがまず問題だろ?相手にスマホ持ってますってアピってどうする?スマホは何してくれんの?トランスフォーマーに変形すんの?もしかして仮面ライダーに変身できんのか?」  さらに月島が言い返してくる。にしても、言い方!
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