インジャード

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「まずは、ついていかないのが鉄則だろうが!!」 「それは注意されたよ!」 「怪しいやつに注意されるってますます意味わかんねぇし。よっぽどだろ?」 「だから怪しい人じゃなかったの!」  食い下がる私にほとほと愛想が尽きると、月島はこれ見よがしに大きなため息をつく。 「人に嘘をついて、騙して連れてくヤツのど・こ・が・怪しくないんだ?その沸騰してる脳みそ、氷水に浸けてみろ。ジュッていうから」 「月島なんて同性に魂持ってかれるほど見惚れてたでしょ?あそこまで洗練された人だよ?悪事に手を染めてるなんて到底思えない。今回も身をもって、危ないよって注意喚起をしてくれただけだし!」    彼を擁護したいとかじゃない。でもただなんかモヤモヤする。  どんな修羅場も月島は笑い飛ばしてくれた。一人の人間として、どんなやり方も尊重してくれた。こんな頭ごなしに叱責されるなんて一度もない。  反抗心というよりショックだ。素直にそう言えばいいのに言えなくて、ぶつかるしかない。 「誰が得すんだよ、その話」  月島の投げやりな言い方に、こっちの方が投げ出したくなる。でもそうしないのはやっぱり月島だから。 「得とか損とかじゃない。なんでそんな小さい話になるの?」  冷静にと思っているが、月島は焚きつけてくる。 「どこが小さいんだよ。今日も地球はそれで回ってる」 「そう思ってるのは月島だけじゃない?」  私も箸をおき、しっかりと向き合う。 「こっちの方が得だから、『この金額で示談しましょう!』とかいつも平気で言ってるだろ?」  と、月島。 「それも交渉の一つのやり方だからね」 「ほら!晴はやっぱりわかってない」 「なにが!?」   「晴こそ人間(ひと)をわかってない」  月島が拳でドンと小さく机をたたく。  横にいる田神がビクッと震えた。らしくない。全く月島らしくない。後輩の前でこんな月島見たことない。
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