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「いつも思うんだけど、それ、自賠回収するとき外すんだから二度手間じゃない?」
普通に、どうしても気になるので突っ込んだ。
「いいの!それこそリムーバくん3号の見せ場だろ?縦に並べてスパパパパーンと連続外しって気持ちよくねぇ?」
リムーバくん3号とは、ホッチキスを外す文房具のこと。1、2号くんは酷使された結果、惜しまれながらも表舞台から去っていった。
「よくわかんないけど」
他人の悦ポイントは不可解だ。その為だけに、こんなに忙しいのにひと手間かけてわざわざ仕事を作るその癖もどうなの?って話。
会話しながらも月島の手は止まらない。淡々と仕事をこなす。あ、違う。仕事を作るか。
こっちは誰かさんのせいで気持ちがすっかり削がれた。
やっぱり昨日のアレは選択ミス?もう片方の道を選んだらどんな展望があったのか…。どっちが冒険なのかもわからなくなってくる。
期待できないはずの選択肢に何かを期待し始めて焦る自分は愚かで、結局は何だかんだで余裕はない。
「だから無理でしょ?“逃げて”だよ!?」
嘘でもいい。お前の選択は間違えじゃない!と誰かに肯定してもらいたい。
他部署の女子にきゃあきゃあ言われる月島の横顔を見つめる。顔は良い。性格も悪くはない。でもちょっと捻れている。だから男性にも嫌われない。ある種の欠点は好感度が底上げされるという具体例だよね。
「勿体ねぇ」
と、月島。気持ちいいほどこっちの心情を裏切ってくれる。
「なんでよ」
「せっかくの結婚が」
「いや、え?結婚!?」
そう言われてはたと気付く。結婚の結の字も出てなかった。取り越し苦労、勘違い?自意識過剰?何にせよ、悩む必要なかった、とか?
「でもなんか、かわいそー」
と、月島。あまり可哀想に聞こえないカワイソー。
本気とは思えない。それでも、口先ばかりでも非難されるとちょっと悪いことしたかも、なんて思えてくるから不思議。
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