183人が本棚に入れています
本棚に追加
/146ページ
なにが、違った?なにか、変わった?
なんだかんだでずっと笑える日常が続いていくと思っていた。でも、そんなの無理なのかもしれない。
昨日見た月だって少しずつ地球から離れていってる。ホントはいつまでも“同じ”じゃいられないんだよね?
漠然とした不安を取り去るように笑顔で、
「お待たせしました」
と、小野原に声をかける。
小野原の背後には長く続く細い廊下。そこには長い足の陰影。CMのワンシーンみたいだ。
ホントにただの公務員ならどこの窓口にいるんだろ?でも戸籍課にだけは配置しちゃダメだろう、市役所離婚が増える。
「月島さん怒ってました?」
小野原から差し出されたキャラメルの飴を素直に受け取る。
「月島ですか?いいえ」
あれ?そもそも、
「どうして定期連絡のことをご存知なんですか?」
不調中の相手との面談は定期的に連絡を入れる決まりがあるが、小野原はなぜそれを知っているのか?
「そういうものでしょ?ですよね?違いました?」
ですけど…?
小野原が微笑む。面倒な質問には蓋をするこの笑顔。あぁ、これが嘘つくときの顔か。
嘘の尻尾を密かに、でもしっかりと捕まえる。
最初のコメントを投稿しよう!