リクエスト

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「俺たちの仕事は慈善事業じゃない。契約者から集めた保険料で事故にあった人に保険金支払ってる。それで飯も食ってるプロだ」 そう月島は言い切る。 「プロ…」 「弁護士でもないのに示談交渉(ネゴシエート)してるアジャスターだろ?困ってる“その人”のために仕事してる。ただそれだけ、なんだよな?」  だろ?と、月島。確かにその通り。感情で仕事をしているわけじゃない。そんなことをしたら収拾付かない。 「怒鳴られても動じない。逆に“しめた!”って不気味に微笑んでる晴は本物(プロ)だ」 そう断言されても、 「褒められた気がしない」  むしろディスってるようにしか聞こえない。 「マジでリスペクトしてるよ。そんな晴がいるから、俺もこの仕事続けて来れたし、続けたいって思うし、これからも……あれ?何言ってんだろ?」  月島がおかしいなと首を傾げた。  確かにおかしいかも。少し顔が赤い。目もウルウルしてるような… 「まさか、」  昼間から酔ってる。自分に、ではなくもちろん酒に? 「あ、さっきのチョコ。あれ、田神(たがみ)にもらったチョコだよね?まさか、ウイスキーボンボン!?」  月島は酒に弱い。それも子供以下のありえないレベルの弱さだ。  滑らかな自分の語りに月島自身も異変に気付く。慌てて前の席に座る田神のごみ箱を漁りに行き、チョコレートの空箱を見つけ、成分表示部分を確認。「何してるんですか?」とポヤンと見下ろす田神の頭に箱の角を突き立てる。 田神は何も言わないが、これは立派なパワハラだ。訴える時は加勢してあげるからね! 「おーい!そこで夫婦漫才してる晴、電話。3番、小野原(おのはら)さん」  そこに結城(ゆうき)が割り込んできた。こっち、こっちと手をあげる。 「はーい!もらいます」  私もブンブン手を振り、それに応えるように電話をもらう。とりあえず酔っ払いは後回し。
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