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.  早朝、母から連絡が入った。「実家に電話したんだけど、お祖父ちゃん出ないのよ。コヨリ、見に行ってくれる?」  祖母が亡くなった後、母が長野に来るように誘ったけれど、祖父は「わしゃ、絶対にこの家を出んからな」と頑なに拒み続けた。今年で80歳になるけれど、いまだに富山の実家で一人暮らしをしていた。  コヨリは急いで朝食を食べると、富山に向かった。天候に恵まれ、道路も空いていて、思ったより早く三本松トンネルを越えることができた。『これだったら昼過ぎには富山に着けるかも知れない』と思った。  コヨリは、道の駅で短い休憩をとり、再び富山に向けて車を走らせた。ところが、車が野麦街道を超えた辺りでちっとも前に進まなくなった。それだけでなく、美しく見えていた山の稜線があっという間に雲に覆われ、横殴りの雪が降り始めたのだ。  きっと事故があったんだわ。事故処理が終われば、すぐに渋滞は解消されるに違いない。  そう思ってしばらく待ったけれど、渋滞は一向に解消されない。それどころか雪の量が増え、ワイパーでフロントガラスを拭えないほどになった。メーターパネルを確認すると、ガソリンがずいぶん減っている。  『やばいかも』 .
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