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.  コヨリは、ロックを解除するかどうか迷ったが、ガソリンの残量を示す針が大きく減っているのを見て「絶対に変なことしないでよ」と断りを入れてからロックを解除した。すると男性は助手席がわに回り込み、車の扉を開けてシートに座りドアを閉めた。ドアの隙間から凍てつくような空気が、一瞬吹き込んだ。  「ありがとう」と言った男性の顔は、思いの外イケメンで好青年風だった。けれどコヨリは、「何かしたらすぐに警察を呼ぶから」と念を押した。男性は、「心配しないでください」と言いコヨリの目を見て笑みを浮かべた。そして思いついたように、「そうと決まったら私の車に移りませんか? 私の車のガソリンが無くなったら、あなたの車に乗り換えましょう」と言った。  この誘いに、コヨリは眉をひそめた。すると男性は、「男の車に女性一人で乗るなんて、嫌かもしれませんが、あなたの車のガソリンが無くなるより、ぼくの車のガソリンが先に無くなった方がいいでしょ?」と言った。  確かにこのまま渋滞が続けば、ガソリンが無くなり、車内で凍え死ぬかも知れない。自分の車にガソリンが残っていた方が安心だ。コヨリがそう思ったとき、突然暴風雪が収まった。コヨリは、男性を信じ車のエンジンを切ると、後ろの車に乗り移った。 .
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