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第一章 度重なる偶然
中学一年生の賢治は学校からの帰り道で、コンビニから走り去る男を見かけた。
次の瞬間、「ドロボーだ。誰か捕まえてくれ」と叫ぶ店員らしき姿が目に入った。でも、今の賢治にはどうでも良いことに思えた。賢治はいつもの公園についた。いつも通りにおきまりのベンチに腰掛て日が暮れるのを待った。賢治は母親と二人暮らし、早く帰っても「ただいま」を言う相手もいない。母親が帰宅するまで公園のベンチで時間をつぶすのが賢治の日課になっていた。
「やあ、ぼうず。早く家に帰れよ」
見知らぬ男が声をかけてきた。
「おじさん、誰!」
賢治は反射的に答えた。
「さあね。ただおじさんにもぼうずと同じような子がいるんだ。家の人が心配しているぞ」
賢治が男の方に顔を向けると男の姿はもうなかった。
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