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「これかい、ちょっと転んだんだ。おじさんには関係ない」
「もしかして、ぼうず、イジメられてるんじゃないのか」
今度は賢治がギクリとした。
「そうかい、図星のようだな、ぼうず」
「でもな、ぼうず。イジメられるってことはそんなに悪いことじゃないんだ。人は自分と同じレベルの人をイジメはしない。イジメられるってことは、ぼうずには人とは違った個性と才能があるってことの裏返しなんだ。挫けずに乗り切れば、ぼうずが人と違った個性と才能を発揮できる時がきっと来る」
「そうかな。でも僕、それまで耐えられそうにないや」
「若いころの一年や二年は長いが、大人になってからの十年二十年に比べれば短いもんだ。前だけを向いて歩んでいれば、いつかはきっと道が開ける。おじさんが保証するよ」
「おじさん、ありがとね。そんな風に勇気づけてくれた大人はおじさんが始めてだよ。
やっと僕、決心がついたよ。でも、もっと早くにおじさんに会いたかったな」
賢治はポツリと言った。心なしか目に薄っすらと涙を浮かべているようにも思えた。
それが悔しさから来るものなのか、嬉しさから来るものなのか、その時は分からなかった。ただ一つ言えることは、明日になればまた会える。男の中では既に偶然は必然になっていた。
『タイムトラベル装置は万能さ』男は高を括っていた。
「じゃあ、またな・・・」
男は軽いノリでその場を後にした。
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