第三章 必然にはワケがある

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 翌日、男は公園のベンチでいつもの少年を待っていた。満開の桜が春の訪れを告げていた。でも、何故か少年は姿を現わさなかった。 『もっと早くにおじさんと巡り会いたかったよ』  男は少年が別れ際に言った言葉を思い出していた。 「そうか、そういうことだったのか・・・」 男は胸ポケットから取り出した写真を覗き込んだ。写真には赤ん坊を抱いた美佐子が写っていた。 「許してくれ賢治、そばにいてお前を守ってやれなかった」 「そんなことないよ、最期に助けてもらった。ありがとうね、とーちゃん」 確かにそう聞こえた。見上げると桜の木が突風に煽られたのか、花吹雪を舞い上がらせていた。 (完)
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