第二章 偶然の影には必然ありき

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第二章 偶然の影には必然ありき

 それから何日か同じことの連続だった。  賢治は学校を早退してコンビニの前で待ち伏せした。コンビニから走り去る男は公園でいつも声を掛けてくる男と瓜二つであった。賢治は公園で勇気を出して男に切り出した。 「おじさんって、もしかして泥棒。泥棒は良くないよ」  男はギクリとした。  男は偶然にも骨董品屋でタイムトラベル装置を手に入れた。最初は過去に戻って大金を手に入れることを考えたが大金を奪うとパラドックスが生じて、未来を大幅に変える危険を伴う。そこで数日前に戻って、小口現金を何度も同じ店から奪うことを思いついた。これなら未来への影響も少ないし、何度もといってもタイムトラベルで同じ日に決行すれば店にとっては一度の小額被害で済む。  でもなんで、このガキに感づかれたのか。男はそんな心境を隠し、平静を装って賢治にこう切り出した。 「それにしてもぼうず、いつも生傷が耐えないな」  男は賢治の顔の傷を見てそう言った。
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