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第三章 必然にはワケがある
「ピンポーン」
男はある一軒の家のチャイムを鳴らした。ドアが開き、一人の女性が姿を見せた。
「あなた、まさか・・・」
女性は驚愕の表情を露わにした。
「長い間すまなかった。やっと、借金を完済した。中に入れてくれないか」男は言った。
女性は渋々、男を部屋に招き入れた。
「あの時は友人の連帯保証人になったばかりにお前たちに迷惑を掛けた。離婚して姿をくらますしかなった。あれから十三年か・・・」
「遅すぎるんだよ、あんたは」
男の元妻の美佐子は言った。
「今からでもやり直そう。ところで賢治はどうしてる。元気か」
「賢治は去年亡くなったのよ。ちょうど中学に入ったところだったかね。あの子ね、あなたと一緒で変に正義感が強くてね、友達が給食費を盗んだのをかばってね。でもうち貧乏だったから、今度は賢治がイジメのターゲットにされてね。あの子耐え切れなくて・・・」
美佐子はそう言うと目に涙を浮かべていた。
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