照明技師のNさんの話

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 照明技師のNさんがまだ駆け出しだった頃の話。  急病で倒れてしまった先輩の代打で、急遽、とある劇団の照明を担当することになった。  小屋(芝居を行う小劇場のこと)に到着し、舞台監督と慌ただしく打ち合わせを行う。  先輩はすでに照明の仕込みも終え、ゲネプロ(リハーサルのこと)も終わり、あとは本番を待つのみ、というところで、倒れてしまったらしい。  本番まで残り時間わずか。とにかく時間が惜しい、Nさんは調光室に入った。  キッカケに合わせてボタンを押すだけになっているはずだ、と舞台監督が言っていたとおり、回路も問題なさそうであるし、先輩が残した台本や、照明卓には順番通りにナンバリングがされている。このナンバー通りに操作すれば問題なさそうだ、とNさんは胸をなで下ろしたのだという。
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