いないいないばあ

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いないいないばあ

その日、育休中のAさんにはどうしても外せない用があった。 しかし生憎旦那さんは仕事、Aさんはようやく一歳を過ぎたばかりの我が子を抱えている。 急な用だったため子供の預け先もない。 仕方なく我が子を連れてバスを使って出掛けることにした。 泣いたりしないかしら……Aさんは不安で堪らなかった。 子供を抱き、何とかバスに乗り込んだ。 バスの中は空席がポツポツとある状態。 Aさんが空席に座ってホッとしたのも束の間、案の定膝の上の子供がぐずり始めた。 気を逸らそうと持ってきたお気に入りの玩具を渡してもダメ、話しかけても背中を撫でてもダメ。 次第に泣き声が大きくなっていく。 前に座っていた若者は居心地が悪そうにイヤホンを付けた。 周りからの無言の圧力。泣き止まない我が子。 Aさんが焦れば焦るほど子供は泣き喚く。 もう参ってしまった。席を立つか立たまいか。 すると、後ろから声を掛けられた。 「あらあら、何歳?バスは初めてかしら」 Aさんが振り返ると、後ろの席にいた年配の女性がにこにこと微笑んでいる。 声と同じく優しそうな人だ。 腕の中の我が子は相変わらずギャーギャー泣いている。     
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