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「あんなにいやらしいことしちゃうのに」
「ああ! もう、やめて。恥ずかしすぎて死にそう」
湯船から持ち上げた両手で顔を覆うと、後ろから楽しげな笑い声が聞こえてきた。
「一緒に暮らすの楽しみだね」
「うん、楽しみ」
「色々二人暮らし用に買い替えないとね」
「あ、そうだ。仕事はずっと忙しいまま?」
「少し時間を作れるようになるよ。いまは仕事なんでも引き受けてるけど。そんなにしなくていいって言われてるくらいだし」
「そっか、そうなんだ。……よかった」
このまま忙しいままでは寂しさのあまり凍え死んでしまうところだった。それは大げさだけど大げさじゃない。腹の前に組まれた紘希の手をぎゅっと握り、蒼二はそれを引き寄せて頬ずりをする。この手が触れていないだけで、寂しくて夜も眠れない。
「ねぇ、紘希」
「なに?」
「紘希が嫌じゃなかったら、紘希のこと家族に話しておきたいんだけど」
「え?」
「二人で暮らすのもあるし、これから先さ、なにかあった時に知っていたほうが対応できることもあると思うんだ。もちろんすぐにってわけじゃない。その前に自分のことをちゃんと伝えておくから。そのあいだに考えてくれればいいよ」
これから先の未来を考えた時、隣にいるのはずっと紘希だったらいいなと蒼二は思う。だからずっと傍にいられるようにいざという時の味方を作っておきたい。自分の以外の誰かにも紘希のことを守ってもらえるように。
「いいよ。蒼二さんに任せるよ。会う必要があるのなら挨拶しに行くから」
「ありがとう。紘希、ずっと一緒にいようね」
「うん、ずっと一緒だよ。俺はずっと蒼二さんの傍にいる。もう不安にさせないように頑張るから」
「俺も一緒にいられるように頑張る。紘希、大好きだよ」
緩やかに響いて心を優しく包む甘音。温かくて柔らかい自分を見つめる甘色の瞳。二人で育ててきた想いは日増しに大きくなって、二人を包み込む。そしてそれはいつしか二人のかけがえのないものに変わった。触れる指先、唇、すべてから愛があふれている。
これから先も二人で甘やかな恋をしよう。
甘恋-Amakoi-/end
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