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「そんなこと言って、もう全然足腰に力が入ってないよ。壊れちゃうって泣いてたの蒼二さんでしょ」
「そ、それはそうだけど。……まだ足りない。紘希まだいけるよね?」
「俺は平気だけど。でも駄目だよ。明日の朝に起きられなくなっちゃうよ。蒼二さん、ほんと感じやすいよね。俺が一回イクあいだに五回もイッちゃうんだから。自分の遅漏を疑いたくなるよ」
駄々をこねる蒼二をあやすように撫でる紘希は、ゆっくりと背中を抱き寄せて細い身体を抱え上げる。いきなり持ち上げられた蒼二は目を瞬かせて紘希を見上げた。
「お風呂に入ろう。結構汗を掻いちゃったよね」
「あ、うん。でも歩けるよ」
「嘘ばっかり。腰が抜けてる」
慌てる蒼二に笑みを返して、紘希は身体を肩に担ぎながら器用に部屋のふすまを開ける。そして前室に出ると、もう一つある格子戸も開いた。
お互いもう裸なので、脱衣所を通り抜けてまっすぐに奥へと向かう。浴室内は淡い間接照明だけが灯っていて、掛け流しの温泉があふれる浴槽が月と星に照らされながらそこにある。
「熱くない?」
「平気」
蒼二を湯船に下ろすと紘希もその中に足を沈める。なみなみと湛えられている湯船は二人分の体積で湯が一気にあふれて、浴室の床へと勢いよく流れていく。
「すごい眺め、綺麗だね」
「うん、いまの時間は外も真っ暗だろうから余計に月も星も綺麗に見える」
後ろにいる紘希の胸元に背中を預けて、蒼二は一緒に天窓を見上げた。手を伸ばしたら届くのではないかと思えるくらいの星に、なんだか癒やされていくような気分だった。
しばらくぼんやりと星を眺めていると、背後から伸ばされた紘希の腕が蒼二の腰を抱き寄せる。ぴったりと隙間がなくなるくらいに背中がくっついて、蒼二はのぼせそうなほど身体を火照らせた。
「さっきまであんなにエッチだったのに、素に戻ると恥ずかしがり屋だよね。うなじまで真っ赤だよ」
「言わないで」
「蒼二さんは可愛いな」
顔まで熱くなっている蒼二は俯きながら膝を抱える。湯船に映る自分にもわかるくらいゆでだこのように赤い。熱が冷めて冷静になるといつも蒼二は恥ずかしい思いをする。抱かれている時、あんなにも高ぶる自分が自分ではないような気になる。
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