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悟史さんは私に色々な衣装を着せた。ノートパソコンに映った注文ボタンを押すと、アニメのキャラクターの服が部屋に届いた。ピンクのセーラー服、ふわふわのネコ耳、下着が見えそうな短いスカートのメイド服。いろんな新しい私が届いた。
私は衣装を着て悟史さんと一緒にアニメを見ながら、新しい私について勉強した。語尾や性格、決めポーズ。
電動ミシンの音が止まった。
「できたデス?」
「うん…」
一ヶ月ぐらい前から悟史さんが手作りしていた新しい私が、今、完成を迎えた。
私はその場で古い私を脱ぎ捨て、新しい私に着替えた。
白のスクール水着の腰と肩に半透明のフリルが付いている。頭には大きな空色リボン、背中に小さなピンクの羽。他にもごてごてした飾り付けがいっぱい詰まっている。小さなメリーゴーランドみたい。
世界でたった一つだけの、新しい私。
いじめられていた時、私は泣かなかった。家出をする時も、涙を流さなかった。
新しい私は悟史さんに抱きつき、声をあげて泣いた。
そのまま私たちは手を繋いで部屋から飛び立った。
持ってきた果物ナイフは、部屋に置いてきた。
私たちはもうどこにも帰らなかった。
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