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外の空気は静かで、それほど寒くはない。
少しだけ顔を出して、廊下の奥まで誰もいないことを確認して、廊下へ出た。
途端に、薄雲に月は隠されてしまったようで、庭先が暗くなる。
廊下の先はあまりよく見えなくなったが、今なら大丈夫だろう。
そっと庭先の樹の下へ進んで、部屋を方を見やる。
廊下から自分の姿が見えないように、樹の陰へ進み、その先の石に腰掛けた。
はぁー。
もう一度息を吐き出す。
風もなく、寒くはないのに。
肌にまとわりついた嫌な汗のせいで身震いしてしまった。
風呂に入って、この汗も夢の空気ごと流してしまいたいが、この時間に誰にも気づかれないように入るのは難しいだろう。
もし誰かを起こしてしまって、女だとばれたら大変なことになる。
外を歩き回るわけにはいかないが、少しここに座って気分転換して、戻ろうかな。
そう思ったところだった。
「何やってんだ?」
自分に向けられた小さな声に、体が文字通り飛び上がった。
悲鳴をあげなかった自分は、すごいと思う。
気配はなかった。足音もしなかった。
木の葉の揺れる音さえ。
だから、まさか誰かに声をかけられるとは思わなかった。
しかも、ここにいるはずがない人の声だったのだから。
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