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 そしてある日、Yさんはぷっつり切れてしまった。  その日、授業で配布物が配られたが、またYさんの分まで回ってこなかった。けれど見れば、『ヒロキくん』にはしっかり配られている。そんなことは何回もあったことなのに、それを見た途端、積もり積もった鬱憤が爆発した。  Yさんは『ヒロキくん』をひっ掴むと、驚いて喚くクラスメートを無視して、窓からポーンと放り投げてしまった。  三階の教室から放り投げられたぬいぐるみは、そのまま落下していった。ぬいぐるみだから、落ちても大したことはないだろう――。  すると、ドンッ! とものすごい音がして、教室中が凍りついた。  重たい何かが地面に叩きつけられたような、鳥肌の立つような音だった。  みんな真っ青になりながら、恐る恐る窓から下をのぞき込むと、そこにはキャラクターもののぬいぐるみが笑顔を浮かべて転がっているだけだったという。
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