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 Yさんは子どもの頃、父親の仕事の関係で転校が多かった。  小学五年生のとき、××県の学校に転校した。すでに転校は慣れっこだったが、やはり緊張する。  ドキドキしながら教室に入ったとき、Yさんは思わずぎょっとした。  教室の真ん中辺りの席に、大きなキャラクターもののぬいぐるみが座っていたからだ。転校生を驚かすジョークかとも思ったのだが、先生もクラスメートたちも普通にしている。  いったいなんだろうと思って、休み時間に訊いてみると、あのぬいぐるみは、死んだクラスメートの代わりなのだという。  ヒロキくんという男の子がいたのだが、半年前に喘息の発作で亡くなった。それで、ヒロキくんが好きだったキャラクターのぬいぐるみを、彼の代わりに置くようになったという。移動教室はもちろん、社会科見学などのイベント事には必ず連れていくし、クラス写真を撮るときは真ん中に据える。本当にクラスの一員として扱っていた。  Yさんは思わぬエピソードに感心した。
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