過去の遺物

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b2f7897a-0443-431b-bc48-f4adb90d2e0a ーーで…母ちゃんはその女を逃がしたんか? ーー…仕方なかった 「ほら…急いでこっち…とにかく東京までの新幹線の切符。その後は自分で考えて」 「はい…すみません。ありがとうございます」 「ほら、急がんと」 「せめて…お名前だけでも…」 「そがんこと…どげんでもよかけん!急いで!」 「いえ…お名前だけ」 「由美…大神由美」 「大神由美さん…ありがとうございました」 ーーたぶん…あの時彼女のお腹には子供がおったはずと。 ーーアンタのお父さんってクズやけど…そがんとこだけは…まともやったけん。 ーー自分が愛した女と子供のためやったら… ーー人を殺すって? ーーそうね…褒められたことでもなかけど… ーーあの人なりの愛情なんだろね…自分勝手極まりないんやけど… その告白から1週間後、母ちゃんは死んだ。 俺に何をさせたかったのか… 今でも分からない。
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