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ーーで…母ちゃんはその女を逃がしたんか?
ーー…仕方なかった
「ほら…急いでこっち…とにかく東京までの新幹線の切符。その後は自分で考えて」
「はい…すみません。ありがとうございます」
「ほら、急がんと」
「せめて…お名前だけでも…」
「そがんこと…どげんでもよかけん!急いで!」
「いえ…お名前だけ」
「由美…大神由美」
「大神由美さん…ありがとうございました」
ーーたぶん…あの時彼女のお腹には子供がおったはずと。
ーーアンタのお父さんってクズやけど…そがんとこだけは…まともやったけん。
ーー自分が愛した女と子供のためやったら…
ーー人を殺すって?
ーーそうね…褒められたことでもなかけど…
ーーあの人なりの愛情なんだろね…自分勝手極まりないんやけど…
その告白から1週間後、母ちゃんは死んだ。
俺に何をさせたかったのか…
今でも分からない。
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