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後日、私たちは付き合う事になった。もちろん、最初は恋人からだ。
結婚については、まぁその内ね。
告白されて初めて、自分の気持ちと見詰め合った。容易に答えは出たものの、それをまだ確りと伝えてはいない。
私からの〝好き〟は、今度音に乗せて届けよう。
因みにだが、赤木さんと黄田さんは全てを知っていた。製作中の歌詞を見たら、直ぐに分かったと言っていた。
ただ、黒川くんに口止めされた為、黙っていたそうだ。
演技が自然すぎて、全く見抜けなかった。私が疎いのかもしれないが、本当に驚いた。
恋人関係になっても、黒川くんは以前とあまり変わらない。素直で、時々強引で、でも優しくて明るくて、私を引っ張ってくれる人だ。
良い方向へと、いつも私を導いてくれる人――。
「明日のライブ、頑張ろうね」
並んで歩きながら、家路を辿る。黒川くんとは家の方向が同じで、前々から時々一緒に帰っていた。今はと言うと、毎日のように帰っている。
「もちろんです! 一緒に歌えるのめっちゃ楽しみです!」
「それ、公演の度に言ってるよ」
微かに笑声を上げると、黒川くんは半身で顔を覗き込んできた。そして、私の何倍もの笑顔ではにかんだ。
「だって好きなんですもん。夏香さん本人も、夏香さんの歌も大好きです!」
その笑みは、まるで太陽だ。
明日、高校最後のライブを開演する。黒川くんに手を差し伸べられ、加入してから早一年半、とても早かった。
灰色だった私の青春は、彼と言う存在によって輝きを取り戻せた。
いや、青春だけじゃない。これから進む道だって、生き方だって、全て彼が変えた。
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