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「クソったれ、さっさと死にやがれ」
俺の目の前には、緑肌の小鬼――ゴブリンがいた。地球じゃ見た事のない、マンガやゲームに出てくるような正真正銘の化物だ。
そんな化物相手に、少し前まで只の高校生だった俺が鉄の剣を持って殺し合いをしている。この狂った状況に、激しい怒りを覚えた。
「クケ……ケケッ」
「なぁ、お前も楽になりだろ」
ゴブリンは手負いだ。斬傷から所々濃い緑色の血が流れ、足腰もフラフラしている。勿論、ここまで追い詰めたのは俺だ。
まぁ、こっちも棍棒で反撃されて、横っ腹にイイ一発を貰っちまったけど。あーマジ痛ぇ。
「クギャッ!」
「オラァ!」
汚い声を上げて迫ってくるゴブリンに対し、俺は鉄の剣を野球バットを振るようにおもいっきり真横に振る。
身長的な差なのか、剣先は奴の首を捉えブチブチと筋繊維を断ちながら両断する。首が刎ね、残った身体がドシャリと地面に伏した。
生き物を殺した、嫌な感触が手に残る。
「終わった……」
はぁーと止めていた息を吐き出し、力尽きたように地面に座る。
死んだゴブリンの身体が光ると、粒子になって空中に消える。残ったのは、『ゴブリンの皮』だった。
こいつらダンジョンモンスターは死ぬと、死体は一切残らず粒子になり霧散する。その際、頻繁にアイテムを落とすことがある。
本当に、何もかもゲームの世界みたいだ。でも、そうでなければ俺のような心が弱い人間は戦えない。ゲームみたいだからこそ、命を奪っても良心の呵責に苛まれなかった。
立ち上がり、『ゴブリンの皮』を拾う。 皮をヒラヒラさせながら、俺は何度も口にしている悪態をついた。
「クソったれな世界だ」
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