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頭をしばかれて、またテーブルに突っ伏した岩田くんは、貧乏ゆすりを始めた。
がたがた椅子を鳴らしながら、うーうー唸る。
もーやだ。
席、移動しよう。
そもそも新人歓迎会なんだから、新人くん達を歓迎しなきゃ。
こんな隅っこの席で岩田くんと差し向かいって、いつもの仕事と変わらないもんね。
せっかくの飲み会なんだから、普段交流のない人とこそ関係を深めなくてはいけない。
よーし!移動だ!
ちょうどトイレ帰りと思しき先輩女子が通り過ぎようとするのを呼び止めた。
「日浦さんっ!」
なに?と微笑む先輩は、顔色はまともだったが目付きは完全に酔っ払いのそれだ。
「席、代わってください!」
「んー?」
「ああもういいから、日浦さんここ座って下さい。私、適当なとこ行くんで」
「えー私、ここに座ればいい?」
はいっ!と椅子を差し出すと、大人しく座ってくれた。
日浦さん、神です!
「日浦さん、ずっとここに座ってて下さいね。動いちゃダメですよ」
「りょーかーい!」
ピンと挙手して返事する先輩に気づいた岩田が、「あれ?こやまがひうらさんになった~」と瞬きをする。
「わー、岩田だ。やっほ~」
「おはようございます。ところでここはセネガル支店ですか?」
「あはは、岩田がヘン~。ここは『まんぷく』だよ」
「あーまだか」
「そう!まだまだ飲みたいよね~」
なんかいい感じじゃない?
ナイス私。
若干噛み合ってないけど、二人で楽しくトークしてるし。
私はすかさず退散だ。
「ひうらさ~ん」
「えーなになに?」
「おれ、つらい」
「えー悩み?岩田のくせに?」
「早く日本に帰って、こやまとヤりたいんです」
「みんな~!岩田の悩み聞いてあげて~!岩田は小山ちゃんとヤ」「日浦さんすみませんもういいです!ここ私の席なんで自分で座ります。日浦さん、ほら課長の隣でしょ?早く戻らないと!!!」
は~い戻りま~す!と敬礼して去る日浦さん。
キケン!!!
とんでもない誤爆するところだったではないか。
酔っ払いに酔っ払いの相手はダメ、絶対!
私のバカ!
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