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夢かも?
はあ、と深い溜め息を落としながら椅子に座った。
一気に酔いが覚めてしまったら、差し向かいでぶつぶつ呟く岩田の姿に頭痛がする。
彼が酒に飲まれているところを見るのは、初めてだ。
今回の納期かなりギリギリだったし、随分ストレスが溜まってるのかな。
それにしても、今日の酔い方は社会的にもアウトだ。
まあ、岩田くんとも長い付き合いだしね。
今回だけは私が我慢して、岩田くんの社会人生活を守ってあげればいいか。
シラフになってから、恩を売ってやる。
「俺さ~、辛い~」
「ううー、こやま~、好きっ」
「ホントこやま好き」
「一目惚れ…なのかな」
「毎日どんどん好きになるんだ」
「こやまと付き合いたい」
「ゆきって呼びたい」
「ゆきと結婚して、ゆきの尻に敷かれたい」
「くそー諦めらんねーよ」
「最後にもう一回、告白してみようかな」
「でもどうせまたスルーされるかな」
「もう泣きそう…」
「ううっ、なんで伝わらねーんだろ?」
な・ん・の・話・だ
グズグズと泣き寝入り体制に入った岩田を前に、一言も発する事が出来なかった。
小山ってどこの小山だ?
私の事じゃなかったの?
えーと、岩田は「こやま ゆき」さんが好きで?結婚したい、と。
そして何度か告白して、お断りされた、と。
うん。
私(小山 雪)には覚えがない。
なんだ、ただの同姓同名か。
紛らわしいっつの。
いやあ、それにしても岩田くん好きな人いたんだなー。
そして好きな人からは相手にされていない。
ぷぷっ。
かわいそう。
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