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聖里は大きく息を吐くと、小さく頷いて立ち上がった。「ちょっと待ってて」
リビングに戻ってくると、その手にはあの白い紙が握られていた。
「どんなことでも受け入れるから、この白い紙の意味を教えて」
母親の様子は変わらなかった。「へえ。聖里と翔太って書いてある」
「これパパの字だよね」
「そうね。聖の下の一本が斜めになってるし、ほかの字もパパが書いたもののようね」
ここまで怪訝なものが揃っていても態度を変えない母親に、聖里は苛立ちを感じ始めた。「いや、そうねじゃなくて、なんか意味があるわけでしょ? なんで私の名前が書いてあるの?」
「そんなこと言われても、ママだってわからないわよ」
「これ、パパの本棚に隠してあったの。封筒に入って、目立たないように本と本の間に挟まってた。どう考えたって怪しい書類でしょ。ママにも隠してるウソがあるってこと?」
威勢よくまくし立てる聖里だったが、もはや母親に訊いても進展しない気がしていた。それでも、不満をぶつけずにはいられない。
「事情があるなら、ちゃんと話してくれればいいじゃん。ウソつかれてるのがムカつくの!」
聖里はリビングを飛び出し、自分の部屋に駆け込むとベッドへとダイブした。こんなはずではなかった。母にぶつけるつもりではなかった。今の様子からして、母は本当に翔太を知らないのだろう。そう考えると、ますます罪悪感が募ってゆく。
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