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 ダイニングテーブルに、聖里と母親が向かい合って座っている。テーブルの上の卓上ライトには、青色のセロハンと紫色のセロハンが巻き付けられている。手作りできるよ、と美緒子から教わった、簡易的手作りブラックライトだ。 「じゃあ、スイッチ入れるね」  聖里が宣言すると、母親は無言でゆっくりと頷いた。  テーブルには、あの白い紙。  かちり。  ブラックライトに照らされ、白い紙は青紫に染まった。 「うわ」  思わず聖里が叫んだ。 「あらあ」母親が呑気な声を上げた。「ずいぶんとびっしり書き込んであったのね」  まるで何かの契約書のように、紙にはずらりと文字が並んでいる。かつてワープロで印字され、時間と共に消えていった文字だ。ブラックライトの作用で、すべての文字が白い。
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