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本棚の片隅に挟まれていた封筒の中から聖里が見つけたのは、経年劣化を思わせる、ベージュがかったA4サイズの紙だった。ほぼ中心に、小さく「翔太」と書かれている。そしてそのすぐ真下には「聖里」とあった。どちらもボールペンで書かれた手書きの文字だ。
「翔太……、って誰?」
聖里は思わず声を漏らした。学校にも、親戚にも、あらゆる人間関係を脳内で検索してみたが、翔太という人物に心当たりがない。
何か良からぬ内容のものに違いない、と聖里は直感した。本棚の片隅に、しかも封筒に入れておくという保存状態が怪しい。自分の名前が正体不明の「翔太」という男性と並べられていることも気味が悪い。しかし、聖里が何よりも異様に感じたのは、その配置だった。
紙のほぼ中央に自分の名前と、見ず知らずの男性の名前がぽつんと並記されている。二人分の名前以外はくすんではいるものの、全体的に真っ白と言っていい。紙のほとんどを占めるその空白を眺めているうちに、聖里は言葉にならない恐怖を感じ始めていた。
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