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「そうなの? なんでわかるの?」
「私の『聖』っていう字を見て」
白い紙に書かれている「聖」の字は、手書きであるがゆえに活字ほど端正ではない。中でも下の部分、「王」のバランスが歪んでいた。
「任せる、っていう漢字の右側みたいになってるでしょ? 上の横棒が右から左下に流れてる」聖里は人差し指で「ノ」のように動かした。「これ、パパのクセなの」
「娘の名前を間違ってるんだ」
「ひどいでしょ? 私も最初そう言ったの。でもパパは、念のために古い辞典で調べたらこっちのほうが正しい字なんだ、って逆切れするんだよ?」
一本だけ斜めの線が多いだけで、白い紙に書かれた聖里の名前は不安定に見えた。
「全体的な雰囲気もパパの字に間違いない。でも、この紙のことを知らないかもしれないから、ママには迂闊に訊けないんだよ」
なるほど、という意味合いの長い鼻息が美緒子から漏れた。
その時、聖里のスマホに父からのLINEがあった。
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