8/21
前へ
/21ページ
次へ
『知らないなあ。ママの親戚じゃないのか?』  文面を読むなり、聖里は難しい顔をしながらスマホを美緒子のほうへと向けた。 「パパ、何か隠してる。絶対にパパの字なのに」 「じゃあ聖里は、この紙がなんだと思うの?」 「一番恐れてるのは」二人しかいなくなったイートインで、聖里は誰かの視線を気にするそぶりを見せた。「私に、お兄ちゃんか弟がいるのかもしれない」  眉間に小さな皺を寄せ、切羽詰まった表情で聖里は言ってのけた。  目線を合わせていた美緒子も、思わず眉間に力が入っていく。「それが、この、翔太?」 「でも翔太は、私が赤ちゃんの頃に死んじゃったとか、どこかに貰われていったとか、そういう悲しいエピソードがあるのかもしれない。だから私から、親には訊きづらいわけ」  小さく何度も頷く美緒子が、不意に白い紙へと手を伸ばした。 「こうやって男女が並んでると、カップルみたいじゃない? あ、ってことは……」白い紙を目の高さに上げて凝視している。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加