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「てことは?」
「イイナズケ、だっけ? 翔太と聖里が結婚することを親同士が決めて、んでこの紙にとりあえず名前を書いたのかも」
自分とは違う発想に、聖里は驚いた。
「そんなハッピー、ある? 都合よすぎでしょ」
「むしろ聖里のほうが悲観的すぎだよ。悲しいかどうかわからないじゃん」
時間を忘れて、二人は推理をぶつけ合い、気になることを話し合った。茜色だったはずの目の前の道路は、すっかり夜の黒さに塗りつぶされていた。
帰り際、美緒子がもどかしい様子で気になることを言い出した。
「私、この紙をどっかで触ったことがある気がするんだよね」
何とか思い出してみるから、聖里はお母さんにちゃんと訊くんだよ、と釘も刺された。やっぱりそうするしかないか、と聖里もさすがに考えるようになっていた。でもどんな会話の流れで訊けばいいのだろう、それを美緒子と話し合えばよかった、と聖里が悔やんだとき、すでに自宅の目の前まで帰ってきていた。
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