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「そいつの手の動きに合わせて、カードが右に行ったり左に行ったり、イワシの群れみたいに動き回ったんだ。やばいよな? それなのにカードを動かしてる本人は、授業中に退屈して手遊びしてるみたいに、なんでもないことみたいな顔してたんだよ」
『なるほど。それで栄司は、魔女が弟子入りしたって僕に報告してきたわけだ』
「どうしよう。俺、何回も『俺は魔法使いじゃなくて、マジシャン。さっきのショーは、タネも仕掛けもある手品なの』って言ったのにさぁ、あいつ信じねーし。魔法を教えろの一点張りでさぁ」
『いいじゃん。本物の魔女とお近づきになるチャンスなんて、めったにないよ』
「リーミンは実際にあいつに会ってないから、そんな呑気なんだよ。俺にはわかる。このまま魔法を教えられなくても、あとになって俺が魔法使いじゃないって向こうが気づいても、どっちにしろ騙してたとか逆ギレされて、魔法でひどい目に合わされるに決まってんじゃん」
『悲観的だなあ。そうそうデメリットばかりじゃないだろ。特に栄司にとっては』
「メリットがあるっていうのか?」
『栄司はアマチュアだけどマジシャンだろ? せっかく本物の魔女が弟子入りしたんだ。その子の魔法をうまく利用すれば、他の誰にも真似できない、栄司だけのマジックができるじゃないか』
「……それは、確かにそうだろうけど。でもインチキじゃん」
『マジックなんて元からインチキだらけじゃん』
「おい」
『ごめん』
珍しくそっけない返事だったので、気を悪くさせたかと栄司は焦った。慌てて指を走らせる。
「いいって。怒ってないし」
返事が来ない。トイレにでも行っているのだろうか。
数分待ってみて、またスマホをのぞいてみたけれど、リーミンからの返事は来ていなかった。既読はついてる。やっぱり怒らせた? いやいや、開けっ放しでどこかに行ってるだけかも。
スタンプを送ってみた。すぐ既読はついたけれど、反応はない。
また数分、悶々と悩んで、もうひと押ししてみた。
「おーい」
『はーい』
呑気な返事にズルっと脱力した。
「なんだ、怒らせたかと思ったじゃん」
『本当? ごめんね。僕って、人間心理の機微にはうとくってさ』
「よく言うよ。『野生のカウンセラー』なんて呼ばれてるネットの人気者のくせに」
『すごい異名だよね。光栄だ』
「でもそうか、魔法を取り入れたマジックか」
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