プロローグ

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「じつは犯人、本村じゃね?」 田中といつもつるんでいる、小川の投稿だ。他人の欠点を見つけるのが得意なやつ。田中の子分みたいなポジションで、彼らのグループは、小川が見つけた誰かの欠点をこき下ろすことでクラス内での地位を高めてきた。 「本村、学校に来てたのかよ」 「うわ、きっも」 俺なわけないだろ。学校に行ってないのに、どうやって田中のチャリの鍵を盗むってんだ。 指が、顎がふるえる。怒りなのか何なのかわからないが、とにかく衝動が胃の奥で暴れる。 でも言葉は出ない。指も動かせない。画面越しでさえ、クラスの連中に言い返せない。 黙って見つめる間に、栄司を犯人だとする流れは加速していった。 クラス内の誰もが栄司が犯人ではないことを知りながら、鍵泥棒の役を栄司に押しつけ、楽しんでいた。 「移動教室のときに教室に来てたとか」 「いや、あいつなら家に引きこもったままでも盗めるんじゃね? だってマジシャン()だぜ」 うるさい、やめろ。 「気をつけろよー。あいつ怒らすと、笹原みたいに落っことされるぞ」 うるさい、うるさい、うるさい。 だまれ。 スマホを力いっぱい壁に投げつけた。 自分の部屋なのに、この部屋には他に誰もいないのに、周りを360°敵に囲まれて、攻撃されているみたいだった。 世界には、他人か敵しかいない。 布団をひっつかみ、その下にもぐり込む。 ここだけは俺のエリア。真っ暗で、狭くて、でもここでなら安心できる。ここでしか安心できない。 分厚い布団の外から、まだスマホがブーブー鳴り続けているのが聞こえていた。
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