コンサートの曲目

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ラフマニノフ「ヴォカリーズ」。 張り詰めていた空気の中、切ないメロディーが沖島の指先から紡ぎ出される。普通よりゆっくりとしたテンポ。一音ずつが夜空に瞬く星だった。あまりにも美しい嘆きの声。 聴衆の気持ちが和らいで、音に溶けていく。 沖島の頬に涙が伝った。 波音は知らなかった。 この曲がこんなにも優しく、温かく、そして哀しいことを。
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