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リビングに明るい日が差し込む中、白いレースのカーテンがふわりと揺れる。
沖島はその様子を見つめて、口元に小さな笑みを浮かべた。
ゆっくりとピアノに歩み寄り、その前に座る。それから天井を見つめた。
閑静な住宅街には何の音もしなかった。目を閉じた沖島の唇が、音を出すことなく微かに動く。
彼の中に音楽が流れ出した。
たくさんの曲を弾いてきたその指が。
右の小指が鍵盤に落ちて、トーンと優しい音を奏でる。
ドビュッシー。「亜麻色の髪の乙女」。
ゆったりした、柔らかい、ポロンポロンとした丸い音が長く伸びたり、転がったりしながら部屋を暖かく満たしていった。
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