コンサートの曲目

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コンサートの曲目

「はあぁっ!」 盛大な溜め息と共にベッドに倒れこんだ波音。 疲れを癒すために予約していた、コンツェルトハウスにほど近いホテルの一室で仰向けになり、グーッと限界まで手足を伸ばしたところで脱力する。寝床以外に特に何もない部屋だが、やはり横になれると随分体のつらさが違う。 「あ、シミ」 天井の隅にあるシミは、想像力を膨らませると人が怒った顔にも見えた。 通りの声が遠くに聞こえる中、波音はフッと小さく噴き出す。 ーーあの天井のシミ、アレが波音の怒ってる顔に見えるんだよね。 日本にいた頃、いつも沖島と西野と波音が集合するレッスン室の天井の隅には、沖島曰く「怒った波音の顔」があった。 随分と失礼な話だが、怒ってばかりいた自分さえ愛おしく見つめてくれた沖島の視線を思い出すと、胸が暖かくなる。 四年前を想いながら、波音は瞼を閉じた。 動き出したのは腹の虫が鳴いた昼になってから。シャワーを浴び、首元がスッキリ見える服に着替える。 沖島がヨーロッパに来たばかりの頃、最初のデートで強請(ねだ)って買ってもらった。「ええー?」と沖島は渋ったが、波音はどうしてもこれが欲しかった。 それは小さな六連星(むつらぼし)の付いたネックレス。恐らく石はジルコニア。 波音はその日からずっと、肌身離さず身につけていた。 「昴に会える」 吊り上がった大きな瞳で、鏡に映った自分を真っ直ぐに見つめる。横一文字に切り揃えた前髪が、彼女の目をさらに大きく見せていた。 ーー今のスバルには小山内(おさない)の助けが必要だ。心して来いよ。絶対にショック受けるから。 あの日の西野の声が耳の奥に響いた。 「何があったって、側にいるに決まってるわ」 低い声で決意を呟き、波音は鏡の前を離れた。
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