勝者の驕慢

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(そんな……彼女は) 「……飲物を、お持ち致しました」 愕然とした表情のスティリアが見詰めるなか美女は絞り出す様な声でアロイス達に声をかけ、それを受けたアロイスは蔑みの笑みを浮かべながら口を開いた。 「おや、誰かと思えば元第四騎士団長のクーデリア・フォン・タンネンベルク殿では無いか、姿が見えないと思っていたがここで皆様方に奉仕をしていたとはな……」 (そうだ、彼女は旧ヴァイスブルク伯国軍第四騎士団長クーデリア・フォン・タンネンベルク、ヴァイスブルク陥落時に一騎討ちの末に私が捕らえた凛々しく、そして気高き騎士団長) スティリアはアロイスの蔑みの言葉を半ば上の空で聞き流しながらトレイを手にした美女、旧ヴァイスブルク伯国軍第四騎士団長クーデリア・フォン・タンネンベルクを見詰めた。 霧の月七日に陥落し滅亡したヴァイスブルク伯国、その日スティリアはヴァイスブルクを脱出して再起を図る残党の追撃を行い、その前に立ちはだかったのがクーデリアであった。 クーデリアの戦いは鬼気迫る程凄まじい勢いで追撃しようとするロジナ候国軍の将兵を叩き斬り、その姿を目にしたスティリアは部下の制止を振り切りクーデリアとの一騎討ちを行った。 ロジナ候国でも一二を争う剣技の持ち主であり、単独でドラゴン(古成体)を倒し滅龍騎士(ドラゴンナイト)の称号を持つスティリアだったがクーデリアは凄まじいばかりの気迫でスティリアを迎え撃ち、スティリアとクーデリアはヴァイスブルクの城門付近で壮絶な一騎討ちを繰り広げる事となった。 当初は押され気味になる事さえあったスティリアだったが激しい戦いを続ける内に次第にクーデリアの方が防戦一方に追い込まれ、最終的にはクーデリアが敗れ虜囚の辱しめを受ける事になった。 スティリアはクーデリアに限らず捕虜を丁重に扱う様に部下達に厳命を下した後に残党の逆襲に備えた部隊の再編成と再配置に向かったが、部下達は虜囚となったクーデリアに魔力封じの首輪をつけた後にその身柄をアロイス達に引渡してしまう。 引き渡されたクーデリアは訊問と称してアロイス達だけでなくロジナ候国軍の将官達からも凄惨な凌辱を受ける羽目に陥り、後にその事を知ったスティリアは激怒したが後の祭りであった。
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