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「失礼致します、スティリア様」
クーデリアからゼクトを一口飲ませて貰ったスティリアはクーデリアの手からグラスを取りながら静かな口調で告げ、クーデリアは静かに一礼した後にトレイを手に他のテーブルへと向かった。
「……ありがとうございますスティリア様、本当はあの時貴女に斬られて死にたかった、ですが、この様な餞別を頂き、感謝致します、たとえ騎士団長としての矜持を砕かれ心をへし折られたとしても本望です」
「……許しは請わない、私にはその資格すら無いのだから、もう駄目だと思ったら脱走して私の所に来なさい、その時は私が貴女を斬る、ヴァイスブルク伯国軍第四騎士団長クーデリア・フォン・タンネンベルクとして」
クーデリアはすれ違う際にスティリアと想いを籠めた言葉を小さく囁き合った後にしっかりとした足取りで他のテーブルへと向かい、その後ろ姿を見送ったスティリアが甘い疼きと胸の奥に広がる苦味を一緒くたに飲み干す様にグラスのゼクトを喉に流し込んでいるとナルサスが声をかけてきた。
「……お気に召しましたかな?」
「……戯れよ、少し場の空気に酔ってしまったみたい、宴を楽しみましょう」
ナルサスの言葉を受けたスティリアはストライキを起こしそうな表情筋を無理矢理動かして笑顔を作りながら応じ、その言葉を聞いたナルサスは頷きながらアロイス達と談笑を始める。
その様子を目にしたスティリアは内心で盛大な溜め息をつきながらグラスのゼクトを煽ったが爽やかな甘味を持つ筈のゼクトの味はとても苦く感じられ、スティリアは顔をしかめながらグラスのゼクトを飲み干す。
スティリアを除いた参加者達は宴を楽しみながら奉仕を強いられるエルフの女士官や女兵士達のあられもない姿を楽しみ、一部の者達は気に入った彼女達を無理矢理に連れ出して行き始めていた。
扇情的な下着姿の騎士団長クーデリアは真っ先に野卑た笑みを浮かべた将官数人によって連れ出されて行き、偶然その光景を目にしたスティリアはやるせなさから逃れる様に新たに手にしたグラスに満たされていた苦いゼクトを喉に注ぎ込んだ。
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