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小銭切れ
「ホットコーヒーさん、聞いてくださいよ。」
「おう、どうした自販機。」
「いやね、最近ここらに他の自販機が置かれたとかで、客がそっちに流れちゃって。
売り上げが下がってるんですよ。」
「そうか、確かに最近ここらも静かになったと思ったが、そう言うことだったか。」
「はい、しかもね。
そいつには当たり機能がついてるらしくて、そのせいもあってか、当たり機能がついてない俺には魅力を感じないらしいんです。」
「まぁー、時代の流れってやつだな。
でも、未だに常連客は来てるみたいじゃねーか、そいつらに一時の幸せを運ぶ仕事を、俺らは今まで通りやればいいんじゃないか?」
「そうですよね。
昔から俺を使ってくれてるお客さんは、今でも俺から買ってくれてますもんね。」
「だろ?
ホラ、そんなこと言ってる間にいつもの客が来たぞ。」
『いやー今日も寒いな。こんな寒い日は、いつものブラックのホットコーヒーが体に染みるよな。』
「ホ、ホットコーヒーさん!」
「あーどうやら、ここでお別れのようだな。
今まで世話になった。」
「はい、またどこかで会いましょう。」
ピ、ピ、ピ
『あれ?なんで買えないんだ?
って、なんだよ。つり銭切れかー。
しょうがない、今日はあきらめるか。』
「、、、。
自販機。今日の寒さは一段と心に染みるな。」
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