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もちろん「この世の終わり」でも来たかのような悲壮感も添えて。
取引先のクレームに対しても、身体的特性は効果を発揮する。
例えば平身低頭に謝る際において。
『すみません、申し訳ありません』と散々に謝罪するシーンは珍しくないが、ふくらおじさんの場合は様子が異なる。
電話口で頭を下げつつ、謝罪の意を示すところまでは一般人と同じだが、そのお辞儀の角度が違う。
突き出たお腹が邪魔をして、思うように頭をさげる事が出来ないのだ。
声色の割に頭を垂れずに居られるので、彼のプライドが大きく傷つかずに済む。
理にかなっていると断言して良い。
なんと賢い「種の選択」であろうか。
昼食時。
ふくらおじさんは、つがいである『ふくらおばさん』より用意された餌にありつく。
餌場は主に公園のベンチである。
ここであれば外敵(じょうし)は現れないので、羽を伸ばして食べる事ができるのだ。
気になる餌のラインナップは、白米に梅干し、ミニハンバーグにトマトサラダとほうれん草のおひたし。
それらを胃に流し込むようにして食む。
過剰に咀嚼したならば、無意味に満腹中枢が刺激されてしまうので、噛むという行為自体が厳禁だ。
せいぜい3回も噛み砕いたなら順次喉を通す。
それが、ふくらおじさんの食事法なのだ。
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